指定難病の「軽症高額」と「高額かつ長期」どっちを選ぶべきなのか

つい先日、恒例の指定難病更新手続きを終えました。今回は「軽症高額」での申請となりました。いわゆる軽症特例と呼ばれる制度です。気になる方もいらっしゃると思いますので、潰瘍性大腸炎(UC)を例に解説します。

「軽症高額」と「高額かつ長期」の違い

まず、軽症高額とはなんぞやという話なのですが、難病情報センターの解説ページを読んでみてください。

「高額な医療を継続することが必要」とは、医療費総額が33,330円を超える月が支給認定申請月以前の12月以内(※)に3回以上ある場合をいいます。
例えば、医療保険3割負担の場合、医療費の自己負担がおよそ1万円となる月が年3回以上ある場合が該当します。

軽症高額該当について 指定難病患者への医療費助成制度のご案内 – 難病情報センター

「医療費」というのは、自分が病院や薬局の窓口で支払う金額ではなく、10割分の金額です。たまに、3割の自己負担額と勘違いして、自分はそんなに高額な治療を受けていないので、指定難病を申請できる対象ではないと思っている人も多いようで、それはもったいない。

次に高額かつ長期について。

対象となるのは、指定難病及び小児慢性特定疾病(※)に係る月ごとの医療費総額が5万円を超える月が、申請日の月以前12月で既に6回以上ある患者です。
例えば、医療保険の2割負担の場合、医療費の自己負担が1万円を超える月が年間6回以上ある場合が該当します。

「高額かつ長期」の認定について – 指定難病患者への医療費助成制度のご案内 – 難病情報センター

ここで唐突に「医療保険の2割負担の場合」という例が出てきますが、指定難病の申請が通り、受給者証をもらうと自己負担が2割になるという背景があるからです。

例えば、発症した時に重症や中等症で受給者証が取得できた。症状が落ち着き、臨床調査個人票の評価が軽症となってしまったので、更新できるかどうか心配という人向けの説明です。

ただし、ややこしいことに受給者証取得後は月の自己負担上限額が定まり、その金額が2,500円や5,000円の方もいらっしゃいますので、10割の医療費で考えた方が確実です。

以上の内容をまとめると、「軽症高額」や「高額かつ長期」に該当する条件はこうなります。

医療費(10割)3割負担2割負担(受給者証使用)年間
軽症高額33,330円以上9,999円以上6,666円以上3回以上
高額かつ長期50,000円以上15,000円以上10,000円以上6回以上
1ヶ月に支払った金額が年間何回あるかで決まります。

通院頻度を決める

次に、年間何回支払うことになるかという通院ペースですが、使う薬によって、だいたい決まります。

例えば、エンタイビオ点滴なら8週おきの投与スケジュールが基本なので、隔月通院(年6回)となるでしょう。ステラーラだったら12週おきの投与なので、3ヶ月毎の通院(年4回)となります。

バイオなど高い治療を受けている人は、重症度に関係なく「軽症高額」または「高額かつ長期」に該当します。

私は今のところ5-ASA1 のみでなんとかなっているので、指定難病を申請してからはずっと3ヶ月処方にしてもらっています。ただし、UC以外の症状が落ち着かず、病院に行かない月はなかったんじゃないかというほど、通院しまくっていました。

5-ASAだけで軽症を維持できている人が軽症特例を使えるかどうかという問題ですが、以前通っていたIBDセンターの医師がいうには「通院していれば、申請は通るよ」とのことでした。おそらく、こういうことだと思われます。

  • 定期的に血液検査を受けている
  • 先発品の5-ASAを最大容量で処方されている

当時の私は3ヶ月おきに上記2つの治療を受けており、33,330円以上支払った月が年4回ある状態だったので、軽症高額に該当するというわけです。

これは、あくまでもそのIBDセンターがそういうシステムだったというだけで、3ヶ月毎の血液検査が必要というわけではありません。「難病更新のために大腸内視鏡検査が必須」と説明する医者も多いようですが、これも臨床調査個人票2 を見ればわかるように、更新に必要な検査ではありません。

ちなみに、現在のUC主治医は私のお腹の様子を気遣ってくれるようなことは一切ありませんが、懐具合に関しては非常に心配してくださる方で、ペンタサからリアルダに変える際も電卓を取り出し、細かく計算してくれました。

UC主治医
UC主治医

受給者証を持っていない患者さんにはアサコールのジェネリックを勧めるけど、そうじゃなきゃメサラジンの容量が多いリアルダがいいよ。

先生によって考え方は違いますが、薬を飲み続けることが寛解維持につながると思えば、経済的負担を減らせる指定難病という制度を使わない手はないのです。

UCがRA(関節リウマチ)のように指定難病から外されたら、正直どうなるかはわかりません。おそらく、RA同様にドラッグフリー寛解を目指す流れになるのではないでしょうか。

とりあえず、現行の制度では軽症特例で更新するのが無難ということです。

低所得なら「軽症高額」、一般所得なら「高額かつ長期」がお得

さて、軽症高額(年4回通院)と高額かつ長期(年6回通院)のどちらを選ぶべきかという話題に戻ります。

もし、5-ASA服薬のみのUCなら、ひと月の医療費(10割)が5万円以上という「高額かつ長期」の該当条件を満たすことができないかもしれないです。必然的に「軽症高額」を選び、3ヶ月毎に通院する方向で調整することになるでしょう。

私は併存疾患として、他の指定難病(間質性膀胱炎ハンナ型)の審査も通っており、さらに関連疾患という形で膠原病の通院もあります。ですので、選ぼうと思えば「高額かつ長期」の条件を満たすため隔月通院に切り替えることもできます。

金銭的にどっちが有利なのかは、下表にまとめてみました。

軽症高額年4回高額かつ長期年6回
低所得Ⅰ2,500円10,000円2,500円15,000円
低所得Ⅱ5,000円20,000円5,000円30,000円
一般所得Ⅰ10,000円40,000円5,000円30,000円
一般所得Ⅱ20,000円80,000円10,000円60,000円
上位所得30,000円120,000円20,000円120,000円
自己負担上限額(月額)✕ 通院回数(年間)
参考:指定難病患者への医療費助成制度のご案内 – 難病情報センター

低所得なら「軽症高額」、一般所得なら「高額かつ長期」がお得となることがわかりました。

恥ずかしながら、発症当時は寝たきりでほとんど収入がなく、低所得Ⅰからスタートしました。そこから少しづつ収入が増え、更新するたびに所得レベルが上がっています。

また、いつどうなるかもわかりませんし、正直いってかなり迷いましたが、今年の更新では「軽症高額」を選びました。正確にいうと、更新時に選んで申請するのではなく、更新日までの受診回数を6回まで増やさなかったということです。

去年の夏までは、診察の一回一回が真剣勝負で苦しい状況を今度こそなんとかしてもらわなきゃという思いが強かったので、予約外での受診も多かったです。

でも、今ではとりあえず定期的に病院に行っておくかというノリで、担当医休診(コロナ?)の際は半年も通院せず、残薬の整理期間にあてました(笑)。

こんなに普通の人みたいな生活ができるようになったのは大変ありがたいことです。

※ 新規申請の方がお読みいただいた際にわかりにくい部分(自己負担額etc)もあるようなので、少し追記しました。結論としては、症状を抑えることが最優先になろうかと思います。今回、「軽症高額」と「高額かつ長期」を年間自己負担額で比較して、5,000〜20,000円の差しかないこともわかったので、どっちでもいいかなと思えたのが本音です。どちらかを選んで、大きく損をするということはないという意味で安心できました。

  1. 5-ASAとは5-アミノサリチル酸製剤の略語で、ペンタサ、アサコール、リアルダなどです。ジェネリックだと「メサラジン」と表記されます。 []
  2. PDFで公開されている臨床調査個人票に「検査所見(新規申請時のみ記載、いずれの時期でもよい)」と明記されています。つまり、更新には必要ないのです。https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/097-201804-kojin.pdf []
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